何がどうでも卒業だけはする!
アカデミックの作法を何も身につけないまま渡米してしまったので、私は常識だとされている論文の読み方を全く知りませんでした(大学時代勉強しなかった報いがここで…)。
あまりの宿題の量にすっかり打ちのめされましたが、腹をくくって前に進むしかありません。何がどうでも卒業「だけ」はしなければ。
だとすると、自分の今の実力ではどうしても手に余る所を思い切って切り捨てるしかない。
子育ては手を抜けるところは抜く。しかし、削れる時間はたかが知れている。となると、あれを削るしかありません。そう、Nさんに確保していただいた、日本情報センターの仕事です。
ちなみに、学生ビザでアメリカにいる場合、大学のキャンパス内であれば、週に20時間までは仕事をすることが可能です。また、ありがたいことに、私の場合はアルバイトではなく正規の大学職員のポジションでした。大変恵まれていました。なのにせっかく用意していただいたポジションを諦めるのか?
でも仕方ない、仕事の件はお断りしよう。収入がゼロにはなるけど、元々貯金を切り崩すつもりだったんだし、今のままではいずれNさんにもご迷惑がかかってしまう。
そう思っていた矢先、そろそろ打ち合わせをしましょうと、Nさんより連絡がありました。あの、私の方もご相談したいことが、、、ということで、指定の日時に重い足取りで出かけていきました。
論文は全部読まなくてよい!?
図書館内にあるNさんのお部屋で(一定レベル以上のアカデミックライブラリアンは大学教授と同じく個室を持っていることが多いです)、おそるおそる、実は大学院の授業が始まったのですが、思いのほか宿題が多く、、と話を切り出しました。すると、あら、それはそうよ、と全く驚かれる様子がありません。あれ?ちょっと意外な反応。
アメリカのライブラリースクールはヤギに食べさせるのかというほど、ペーパーを読ませるんだから。私なんかついぞ、出された文献を全部読めたことはなかったわ。
意外な一言でした。なんと、Nさんですら宿題のペーパーって全部読めなかったんだ。そうか、完璧に読もうと思っていたのがそもそも間違っていたんだ。
私の時代と違って、あなたは恵まれてるのよ。本当に色々なテクノロジーがあるから、自動翻訳でもなんでも、使えるものは何でも利用することだわね。
さっきまで重い重い荷物を背負っていた気分が、少し軽くなった気がしました。ほんの少しだけですが。
たしかに考えてみたら、仕事をしないというのはあり得ません。アメリカの図書館情報学の修士課程はプロフェッショナルスクールです。いわば職業訓練校です。学者を育てる場所ではありません。実地に仕事をせずに、教室だけで机上の空論をこねくり回しても、なんの意味もありません。
私はやめるのをやめることにしました(単純)。
リーディングセンターで論文の読み方を指南
その後、誰が教えてくれたか自力で調べたか記憶にないのですが、キャンパス内にあるリーディングセンターに予約をしました。ペーパーの読み方について個別のカウンセリングをしてくれる所です。こういう施設があるなんて、なんてありがたい!
ところで今、Googleでhow to read papersと検索すると、論文の読み方に関するたくさんのサイトやブログ、動画が出てきます。通常は、自分が手にした文献が読むに値するのかどうか、その判断をする必要があるので、どうやって見極めるか、そのノウハウから始まっていることが多いです。私の場合は、あらかじめ先生が選んでくれたものを読むだけなので、そういう意味では楽なのでした(いや、決して楽じゃないけど)。
カウンセリングを担当してくれたアルバイトの学生さんは、頭から最後まで順番に読んでいくのは一番やってはいけないやり方であること、タイトルと抄録、最初と最後の段落を読んだら、段落ごとに最初の行を読んでいく。そんなことを教えてくれました。今思うと、そんなの常識ですし、これに加えて「あらかじめ問いを立てて、その答えを探すように読む」やり方だって知っていますが(タイムマシンに乗ってこの時の自分に教えてあげたい)。
とにもかくにも、何もかも急にうまくいったということはありませんが、当時はまだ精度が低かったGoogle翻訳を使い、大づかみに意味を理解してから英語を読むという方法で、どうにか最低限のことはできるようにはなりました。
しかし、別の厳しい試練が待ち受けていました。針のむしろのようなクラスでのディスカッションです(留学あるあるシリーズ・・・)。
(つづく)
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