【17】図書館の社会的価値をお金に換算するレポート。さっぱり書き方がわからなかった

f:id:kozureryugaku:20190701060803p:image

図書館サービスの価値をお金に換算 

キンメル教授の概論の授業はどうにか低空飛行でついていく感じでしたが、まもなく初めてのレポート課題が出されました。

課題の内容は、図書館サービスの価値をお金に換算するというもの。アメリカのライブラリースクールは、いってみれば職業訓練校なので、学生がすでに図書館で働いていることを前提とした実践的な授業が多かったです。MBAのコンテンツを図書館に置き換えたようなものも結構ありました。

この課題も、自分が今働いている図書館について、そのサービスの社会的価値をお金に換算したらいくらになるか、それによってあなたとあなたの図書館の存在意義を示しなさい、やり方は自由、つじつまが合っていればなんでもよい、というものでした。

卒業して14年たった今なら、その間様々なビジネス経験を経てきましたから、曲がりなりにも色んなアイデアが浮かびます。しかし、当時の私は、まあ一言で言えば「アホ」でした。

ほんとにほんとになんにも思いつかない・・・

「正解セット」と答え合わせをする形でしか仕事を進められない

何故なにも思いつかないのか。なぜならば、社会人になってからというもの、いやそれ以前の子供のころからずっと、物事には「正解セット」が必ず存在し、その答え合わせをする形で自分の仕事を進める、そういうやり方しかしてこなかったからです。上からふってくる業務を疑問ももたずにこなし、自分の仕事が最終的にどんなアウトプットをもたらすのか、そんなことは考えもしないまま、言われたことだけを忠実にこなしていたからです。そして、日本の職場ではそれが良しとされていたからです。

やり方は自由で、ロジックが合っていればよい。こんなふんわりした課題を与えられても、どこに進んでいけばよいのかわかりません。〇〇について調べなさい、的なレポートならいくらでも書けるのに、答えがないなんて、どうやったらAがもらえるのか、傾向と対策も練られないじゃないか・・・しかも、これって言ってみればでっちあげじゃない。架空のお話じゃない。そんなんじゃなくて、もっと既に確立した知識を学びにきてるのに・・・

あらかじめ用意された正解セットがあり、その答えが合っていれば良くできましたと褒められる、そういう成功体験しか積み重ねてこなかった日本人の私には、雲をつかむような話にしか聞こえませんでした。

TA(ティーチングアシスタント)にも相談してみました。「たとえば、人件費や図書館の床面積、資料の数などからコストを試算し、自分が与える価値を時給換算して出すとか、こんな感じでよいのでしょうか?」と聞くと「そういう考え方もありますね」といったふんわりした答えが返ってきました。

うーん、わからないよー。

渡米前に一度だけお会いした筑波大の先生にメールで相談すると、関連文献を紹介してくださり、ようやく方向性が見えてきました。この段階でも私はまだ王道の正解セットはなにか、こればかり求めていて、およそ自分の独自性など考えもしませんでした。

こうして、どうにかこうにか、生まれて初めての英語のレポートを書き上げ提出しましたが・・・ 

f:id:kozureryugaku:20190701060808p:image

3回読んでもわからないと言われたレポート 

他の留学生仲間がAやA+をもらう中、私に戻されたレポートをおそるおそる見ると、評価はCマイナス。大ショックです。

「あなたの言いたいことは、3回読みましたが全くわかりませんでした」というTAのコメントが記されていました。

ちなみにひとつの授業にレポートは数回あり、続けてC以下をとれば単位を落とすことになります。以前に書いたように、1セメスターに9単位を維持できなければ、学生ビザのステイタスを失うので、単位を落とすということだけはなにがどうでも避けなければいけないのです。

「3回読んでもわからない」

一体、これはなに?そんなこと今まで言われたことないんですけど。文章はむしろ上手な方だと自負してきたんですけど。いくら英語だって、そんなに支離滅裂なこと書いてないと思うけど。。。?

しかし、自分の書いたレポートを読み返してみて思いました。どこに着地点があるのかわからない。内容が、前提→方法→結論という順番になっており、典型的な日本人の作文でした。しかも、前提があちこちにぶれる。こういう考え方には、こういう問題がある、一方でこういう考え方もある、みたいなことを書きすぎている。

一言でいえば自分というものがない、これにつきました。

自分はこう思う(結論)、なぜならばこうだからだ(理由)、この順番で述べていけば、多少ロジックに無理があっても「3回読んでもわからない」ということにはならなかったのだと思います。

「ライティングセンター」に予約

このあと、私はキャンパス内にある、今度は「ライティングセンター」にカウンセリングの予約をとりました。アカデミックな文章の書き方についてアドバイスをくれる所です。こんな施設があるなんて、なんてありがたい!(前にもこんなことがあったような気が・・・)

とにかく、まずは結論から!そしてシンプルに!レポートに限らず、すべてのコミュニケーションにおいてこれが重要だということを、その後外資系の会社に就職してからも幾度となく認識することになりました。

(つづく)

◆◆おまけ◆◆

2019/6/21から6/27まで丸善雄松堂さんの「米国図書館研修」ツアーに参加してきました。この間1日だけALAカンファレンスに参加。ライブラリースクールの宣伝ブースで、偶然、当時のTAだった先生に再会!Kip Currier教授にこの時のエピソードを話したら「おー、それは申し訳なかった!」と平身低頭でした。

f:id:kozureryugaku:20190701082202j:plain

PITのブースにて