【29】ライブラリー・スクールでの履修科目。脈絡なく色んな授業を取ったことが、自分のキャリアにとっては良かったと思える

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アメリカのプロフェショナルスクールとは

私が入学したのは「ライブラリー・スクール」という名前でも呼ばれるいわゆるプロフェッショナルスクールです。プロフェッショナルスクールとは、Wikipediaによれば、「主に北米において高度専門職業人を養成する、特定の職域と結びついた教育を行う高等教育機関」であり、例えば一般の人に馴染みのあるのはビジネススクール。そのほかで言えばロー・スクール 、メディカル・スクール、デンタル・スクール 、ナーシング・スクールなど、色々ありますが、いずれも大学院レベルのものが中心です。

図書館情報学でアメリカに留学することとは

しかしこれ、日本語で修士課程という言葉が当てはめられているためか、図書館・情報学で教鞭を取っているような大学の先生でも正しく理解していないのでは?と思うことがあります。「アメリカの大学院に行けば日本で図書館情報学を教えることができるよと先生に言われたので留学したい」と相談され驚いたこともありました。当たってないとは言いませんが、仮に非常勤講師がゴールではコスト的に全く見合いません。また、図書館の現場経験を積み上げていない人が大学で教える場合、その人は研究者志向なのでしょうからPhDまで進む必要もあるでしょう(研究とは何か、ライブラリーサイエンスはサイエンスなのか、これもまた議論が別れるところですが)。

本当のことを言えば図書館の現場で働かないのであれば、マスターコースへの留学はあまり意味がないのかも知れません。

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図書館情報学での授業履修のしかた

しかし私はといえば、入学時、クラスメイトに「あなたのフォーカスは?」と聞かれ、苦し紛れに「アカデミックライブラリーだ」と答えたものの、卒業後にどうしたいかなどその時点では何も考えていませんでした。そのため気の向くままに授業を取っていました。デジタルアーカイブやデータベース設計を取ったかと思えば、紙の資料保存や、児童サービスのストーリーテリングを取るなど、メチャクチャ。ぶれぶれな感じが履修内容にも現れています。

Understanding Information(概論)※

Retrieving Information(情報検索)※
Organizing Information(目録) ※
Technologies for Information Management (情報管理技術)
Digitizing Library & Archival Research Collections(デジタルアーカイブ技術)
Storytelling(ストーリーテリング)

Special Topics(特別講義:利用者教育)

Library & Archival Preservation(資料保存)

Reference Sources and Services(レファレンス情報源とサービス)

Database Design and Applications(データベースデザインと応用)

Managing Libraries & Information Systems & Services(図書館と情報システム及びサービス運営)※

Individual Research(個人研究)

※は必修科目

図書館とその周辺のマーケットを理解するには

もっとも私は、結局は渡米前と同様に図書館とその周辺をマーケットにした業界に身を置くことになったので、自分のマーケットを広く浅く理解しておくという意味において、八方美人よろしくあちらを嚙りこちらを嚙るといった授業の取り方をしたのは悪くなかったと思います。そうでなければ、自分で会社をやるようになった今、公共図書館や資料保存にまでクビを突っ込む図々しさは持てなかったでしょう。

ハンガリーのユーディトは、よく、ライブラリースクールは何の役にも立たなかった、得るものが何もなかったと言っていました。プログラムにアカデミックな要素を求めると確かにそういう感想を持つことになるかも知れません。多少の差はあるものの、どの授業をとっても資金集めとプロポーザルの書き方、プレゼンテーションとグループワークで成り立っており、そこに理論が少し入るという感じでしたから(他の大学がどうだったのか知りたいです)。

図書館と図書館を取り巻く環境が激変している今は、ライブラリースクールの中身も相当変わって来ているようです。かつては必修科目だった目録の授業も今は選択科目になったとか。職業人を養成するプロフェッショナルスクールだからこその必然と言えますね。

(つづく)

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