【34】MLIS(図書館情報学修士)で飯は食えるのか、司書資格で生活は成り立つのか問題

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アメリカで「ライブラリアンになる」というと「ああ、あなたはお金に興味がないのね」という反応が返ってくる、そんなことを誰かから聞いたことがあります。同じプロフェッショナルスクールを出ていても、医者や弁護士と比べライブラリアンは相対的に給料が安いのです。また、就職しても基本的には永久にそこにいられるわけではないので、常にプロとして生き延びていくための様々な努力も必要です。

2013年にお亡くなりになりましたが、シカゴ大学に日本研究の主任司書をされていた奥泉栄三郎さんという方がいらっしゃいました。奥泉さんは慶應の図書館・情報学科の大先輩にもあたり、また最初の会社で営業していた時のお客様でもあり、2000年のシカゴのアジア学会で生まれて初めての海外出張に行った際、大変お世話になった方でもありました。その奥泉さんが、シカゴ市内の日本人バーに連れて行ってくださった時、こんなことを言われました。自分はひょんなことからアメリカに住み着いてしまい、日本研究司書として生きていくことになったが、そうなったからには「日本のことならなんでもアイツに聞けばわかる」と思われなければ意味がないと思った、だから日本に帰った時には書店や図書館だけでなく、カラオケやパチンコにも行く、飲みにだって行く、学術的なことから世俗的なことまでなんでも吸収するように努力する、そこまでしないとプロとして生きていけない、そんな内容でした。奥泉さんのような方でもそんな風に努力されているのかと驚いたことを覚えています。

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さて、日本では毎年1万人の司書資格者が生まれていると言われます。司書課程をもつ大学の数を計算するとそうなるようです。しかし、これは単に図書館という世界で働くための表玄関から入るチケットの一種にすぎません。そして、この資格によって安定した正規の職に就けるのはごくごく限られた優秀かつ幸運な人だけです。残りは時給1000円前後の非正規雇用になります。つまり、司書資格を取っただけでご飯が食べられるという保証はありません。

もちろん経済力のあるパートナーがいて(男女を問わず、ですよ)セーフティネットが確保されている人は話は別です。時給1000円で好きな仕事ができて大満足の人も中にはいるでしょう。それでも相手との関係がいつまでも続く保証がないという意味ではリスクは一緒ですね。

 何がどうでも図書館という空間で働きたい、これ実は「信頼性のある情報を届ける」というミッションをとても狭くとらえている考え方なので、もっと視野を広げて考えてみてはと思います。

MLIS(Master of Library and Information Science)という修士号は、図書館への就職だけでなく、周辺を取り巻く企業への就職にもそれなりに売りにはなります。留学前、私の年収はわずか300万足らずでした。私がいた会社は決してブラックではなく、4回も産休育休をとれる雰囲気があったので居心地は良かったですが、4人子供を育てていくにはあまりにも安すぎました。

帰国して就職した外資系の情報サービスベンダーは最初の年俸が570万円でした。私はこれで4人育てる目途がたったとほっとしました。その後ベースはさほど変わりませんでしたが、実力主義の世界なので、営業ノルマを達成したなりの報酬があり、数年後には1000万円を超えました。生涯賃金を考えたら、図書館界にはもっと貰っている人もいくらでもいるでしょうが、私はさしあたり全員の子供の学費が払えることに安堵したものです。

ではMLISを取りさえすればいいのか。勿論そんなことはないです。コミュニケーション能力とか営業力とか、英語力とか何かとの組み合わせがとても重要です。Nさんによく「鼻差で勝ちなさい」と言われていた私。鼻差で自分を売り込んでいく際のひとつの手札、これがMLISだったのだろうと思います。

(つづく)

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