【番外編】LGBTQやジェンダー、個性の違いを学ぶ。アメリカのストーリーテリングや読み聞かせを取り巻く新しい動き。ドラァグクイーンストーリーアワー(DQSH)

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ドラァグクイーンストーリーアワー

読み聞かせやストーリーテリングからダイバーシティを学ぶ

私がストーリーテリングの授業を受けたのは、かれこれ15年前のこと。アメリカの公共図書館を取り巻く状況もこの15年で相当に変わりました。ドラァグクイーン*1による読み聞かせなど、私が留学していた頃には話題にも上がらず、その存在にすら気づきませんでしたから。

ドラァグクイーンストーリーアワー(DQSH)

ドラァグクイーンによる読み聞かせは、近年、アメリカの公共図書館で盛んに行われるようになりました。LGBTQやジェンダー、個性の違いを子供に学ばせる目的から活動の輪が徐々に広がっていったようです。

特に、サンフランシスコのLGBTコミュニティから生まれたドラァグクイーンストーリーアワー(DQSH)という文化・教育プログラムは、今や全世界に活動を拡大。アメリカ国内ではニューヨーク公共図書館をはじめ全米各地の図書館とパートナーシップを結び、読み聞かせやおはなし会の活動を行っています。

ニューヨーク公共図書館協力の動画

以下の動画は、DQSHがニューヨーク公共図書館の協力を得て実施したおはなし会を動画配信したものです。概要欄には動画の活用の仕方、特に保護者が子供と一緒に見る際のアドバイスが丁寧に記載されています。

www.youtube.com

賛否両論巻き起こし署名運動にまで発展

一方この活動は、保守、リベラル様々な立場から賛否両論を巻き起こしています。2019年8月19日付のnewspressnow.comには“Drag Queen Story Hour at library leads to opposing petitions” (ドラッグクイーンストーリーアワーによる読み聞かせ、請願運動に発展)という記事が掲載されました。ミズーリ州のセント・ジョセフ公共図書館におけるイベント実施について、賛成派、反対派それぞれがオンラインによる請願署名を実施したという内容です。

当日の内容を図書館員がQ&Aで説明

セント・ジョセフ公共図書館ではDQSHによる読み聞かせを2019年9月10日に実施することを正式決定しており、その理由についての図書館員によるQ&Aも公開されました。 

Q&A with librarian Josh Swindler about 'Drag Queen Story Time' | Local News | newspressnow.com

以下、意訳です。 

Q:イベントでは具体的に何が行われるのか。

ドラァグクイーンのビビアン・ヴェルサーチさんが行うのは、子供たちへの読み聞かせとダンスパーティーです。読み聞かせする本は「Jack not Jackie」(名前はジャック、ジャッキーじゃない)と「Not All Princesses Wear Pink」(お姫様がみんなピンクを着るわけじゃない)の2冊。「Jack not Jackie」は、トランスジェンダーの女の子の話、「Not All Princesses Wear Pink」は、プリンセスはスポーツもすれば、スポーティな服も着る、車も修理するが、ピンクの服だって着る、何を着るかは関係ない、そんな内容です。

Q:パフォーマーの方について教えてください。

ビビアン・ヴェルサーチさんは地元のパフォーマー。結婚しており可愛い子供もいる。コミュニティの立派なメンバーであり本当に素晴らしい人です。

Q:イベントにおいて子供との身体的接触はあるか?

図書館のポリシーで、出演者は子供に触れてはいけないことになっています。子供たちがパフォーマーの膝の上に座ることを恐れているというコメントを見ましたが、そういうことは決して起こりません。ドラァグクイーンと子供たちの間に物理的な接触はありません。

Q:パフォーマーの経歴確認は行ったか?

徹底的なバックグラウンドチェックを行い、違法行為、児童虐待、性的虐待がないことを確認済です。

Q:当日の服装は?

読み聞かせは子供たちのためのイベントですから、露出の高い服は着ないし、性的なことを連想させる行為はまったく行われない。子供と一緒に楽しみながらイベントを行う人がたまたまドラァグクィーンというだけのことです。

Q:抗議者はどのように扱われますか?

イベント会場である図書館内での抗議活動や請願は一切許可いたしません。しかし、その人達の集まる場所を分館のいくつかのエリアに確保する予定です。

Q:請願により、イベントがキャンセルされる可能性は?

はっきり言って「ノー」です。図書館はこのイベントを実施します。勿論、反対者の意見は尊重されるべきものです。これまでこのイベントに反対する友人、家族や地域住民と個人的な対話を行ってきたが、彼らの気持ちは尊重しています。しかし最終的に、図書館ではこのイベントが必要なものだと判断しました。それは地域のためというより、我々があらゆる納税者に対して責任を負っているという理由からです。

「イベントを行う人がたまドラァグクィーンというだけのことだ」というコメントには納得です。Youtube動画に出ている方も、子供の気持ちをがっつり掴んで読み聞かせをする素晴らしいパフォーマーです。徹底的な身辺調査で性的虐待の履歴がないことを確認するとか、身体的な接触を禁じるとか、そこまでしないと実施できないものなのかと驚きました。ミズーリという土地柄もあるのかもしれませんね。

日本にもドラァグクイーンによる読み聞かせの会がある

私自身は、先日ある先生に連れていっていただいた歌舞伎町のとあるバーで、ドラァグクイーンのホステスさんと話をする機会を得たのですが、この方は元小学校教師で、学校司書の資格ももっているという方でした。

また、日本にも「Drag Queen Story Hour 東京 読み聞かせの会」という関連団体があるのをご存じでしょうか。不勉強な私は全く知りませんでした。また、日本の公共図書館が積極的にコラボしている例も寡聞にして知りません(あったら教えてくださいませ)。

おはなし会やストーリーテリングを取り巻く状況は確実に変化していますね。

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*1:

ウィキペディアによれば「ドレスハイヒールなどの派手な衣裳を身にまとい、厚化粧に大仰な態度をすること」「男性の同性愛者両性愛者が圧倒的に多い」が、「近年では男性の異性愛者や女性がこれを行うこともある」。