【番外編】研究大学ではマストな2つの文献データベースWeb of ScienceとScopusをディスカバリーツールの観点で比較してみた

今回は、図書館とデータベースに関するマニアックな話。

私は現在、東京農大の大学院で非常勤講師を勤めていて、後期のみ季節労働者のように大学に出没します。

担当授業は、大学院生がアカデミックスキルを習得するための情報検索です。これって図書館の仕事なんじゃ?と思われる方も多いと思いますし、私も実際そう思うのですが、国際農業開発学科ではかなり以前から1単位の授業に組み込んでおり、中東やアフリカ、アジアなどから来ている留学生向けに英語で行っています。

学生さんが日本にいる間、できるだけ多くの良質な研究情報にアクセスでき、情報探索スキルが身に着くよう計8回の授業をがんばりたいと思っています。 

授業の準備をする中、2つの文献データベースWeb of ScienceとScopusをディスカバリーツールの観点で比較してみました。よく言われていることでもありますが、実際に比較をしてみてなるほどと思った点をまとめます。

 

海外文献、Google以外の探し方

さて、自分の研究に関連のある海外論文を探す。これ、人によってやり方は色々ですね。いまやGoogleで全部間に合いますという方も多いですし、Google Scholar、PubMed、SciFinder、Scopus、Web of Science、このあたりがメインではないでしょうか。あるいはScience Directしか使ってないとか、Mendelayを文献データベースとして使っているとか。昔と違ってほんとに色々な探し方があり、みんななんとなく慣れたものを使っていて、他のツールには食指が動かない、そんな人も少なくないと思います。

様々な文献探索ツール

東京農大で契約している海外データベースは大きく3種類、Web of Science,Scopus、そしてSciFinderです。http://proquest.sunmedia.co.jp/tokyo-agri/dblist.html

が、私が担当する授業は演習つきなので、同時アクセス数が1のSciFinderは使えませんし、院生の中には農業経済といった社会科学系が専門の人もいるので、全分野をカバーする文献検索ツールを教えるとなると、Web of ScienceかScopusになります。

Web of ScienceとScopus

実は、私はWeb of Scienceを提供する会社に10年ほど勤めていたので、ここ数年、慣れ親しんだWeb of Scienceを中心に教えていました。

しかし、Scopusもリリースされて既に14、5年たっており、研究分析データとしてはいまや遜色ないと言われています。贅沢にも農大は2つのデータベースを維持しているので、食わず嫌いはやめ、今年こそはScopusもきっちり教えようと思っていました(いや、思っています)。

そんなこんなで、とりあえずベーシックな方法を試そうと思い、あれこれさわっているうちに、わー、やっぱりこの2つのデータベース、そっくりだけど結構違うものだと気がつきました。どちらがいい悪いではなく、検索のアプローチを変えないと、思うような情報を得られない、という意味です。

「Library Service」で両者を検索

その昔、データベース比較で有名だったハワイ大学のピーター・ヤチヨ名誉教授は、文献データベースの評価をする際、必ず自分のフィールド、自分がなじみのある分野のトピックを選んで比較をすべしとおっしゃっていました。

それに習って、私もものすごくシンプルな言葉「Library Service」で両者を検索をためしてみたのですが、予想以上に使い勝手に差が出ました。

結論からいうと、検索結果の絞り込みにサブジェクトカテゴリー、いわゆる分野の絞り込み機能を使った場合は、圧倒的にWeb of Scienceの使い勝手が良いです。これ、私が古巣を擁護しているから言っているのではなく、このアプローチの場合は圧倒的にWeb of Scienceの方が見つかりやすいということです。

数の面ではScopusが圧倒的に多い。が。。

f:id:kozureryugaku:20191001174934p:image

Library Serviceで検索した結果の数は、Scopusが4万近く、WoSが1万と4倍の開きがありました。これは農大の契約範囲内でWoSが検索できる母集団がそもそも少ないというのも理由のひとつですが、それでも数の面ではScopusが圧倒的に多いです。

いずれにしても両者とも絞り込みが必要です。Scopusの4万件もの論文タイトル、ざっと上から見た限りでも、「Exercise-based rehabilitation for patients なんたら、、、」といったような他の研究分野の論文が大量にヒットしていますし、Web of Scienceの場合も同様です。

分野での絞り込みはWeb of Scienceが圧倒的にきめ細かい

 

f:id:kozureryugaku:20191001174945p:image

Scopusの場合、各レコードに付与されている分野がWoSに比べると粗い。なので、検索結果を図書館情報学分野に絞り込もうとした場合、Social ScienceあるいはComputer Scienceあたりを選ばなくてはならず、ノイズが減らせません。

一方、Web of Scienceカテゴリーは200近くあり、最大6種類までひとつのレコードにカテゴリーが付与されます。Information Science/Library Scienceという分野で約半分まで絞り込むことができます。

カテゴリーの設定って難しいんですね。最初に決めたものが後々まで引きずるので。私もこのブログに「アメリカの生活」なんていうカテゴリーを作っていますが、これ、学校とか仕事とか、宿題にあてはまらないその他の話に付与するのに使っています。でも言ってみれば、ブログ全体が「アメリカの生活」ですから、あんまり意味ないなと思ったり。

 

両者はそっくりだけど違う

ブログはともかく、カテゴリーの設定は一筋縄ではいかない。Scopusはもともと別々に存在していた各種データベースを統合して、あとから引用関係でつないであるデータベースです。各レコードを上位概念でくくるしかないのだと思います。実際、こちらのサイトを読むと、Library Scienceというカテゴリーをもっているようなのですが、ある出自のデータベースにはそれがあって、あるものにはない、という風になっているのではないかなと想像します(違っていたら教えてくださいませ)。

What is the complete list of Scopus Subject Areas and All Science Journal Classification Codes (ASJC)? - Scopus: Access and use Support Center

一方、Web of Scienceはサイテーションインデックスという、紙の引用索引が元になっており、どちらかというと図書館の目録データに近いアナログな発想で作られています。

両者は見た目はそっくりですし、収録範囲もかぶる部分が多いのですが、このように裏でもっているメタデータが異なるので、同じ条件で探しても使い勝手に大きな差がでます。

Scopusは違ったアプローチの方がいい

Scopusの場合は、この方法ではなく、まずひとつ鍵になる論文を見つけ、それをMendelayという文献管理ツールに取り込み、レコメンデーション機能を使って、自動的に関連文献をアラートする、といったような使い方の方がより便利だし、得意な気がします。

私自身、Web of Scienceを一通り教えたあと、「これと類似するデータベースにScopusがあり、直感的に使える点でとても似ているので、各自さわってみてください」みたいな説明をよくしていたのですが、もうちょっと正確に両者の違いを伝えるべきだと思いました。

以上、ざっくりとした比較結果でした。