【61】この先アメリカに残るとしたら、私は何になったらいいのか。考えても選択肢はひとつしかなかった

卒業後の進路に悩む日々

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子どもたちを連れてアメリカ留学を実現するのは、私にとってはかなりのエネルギーがいることだったので、実は、留学生活が実現した時点で、ある意味ゴールを達成してしまったような感覚がありました。しかし、このまま卒業して無職でいるわけにはいきません(その頃やっていた図書館の仕事はハーフタイムのポジションでしたし、Japan Foundationの助成金で毎年綱渡り運営を続けていたので、卒業後のポストにはなりえませんでした)。

日がたつにつれ、私にもだんだんと焦りが出始めました。マスターがとれると言って浮かれている場合ではない、卒業までに就職のめどをつけておかないと母子ともに路頭に迷ってしまう・・・。
とはいえ、日本に帰る気は当時はさらさらありませんでした。学生ビザとはいえ、子連れで合法的にアメリカに住める資格をつかみ取るのは、並大抵の苦労ではなかった(今もう一回やれと言われたら出来ないかも)。なので、卒業しました、はい、日本に帰ります、そして、何事もなかったかのようにまた普通の生活に戻ります・・・といったような安易な道は絶対にやだ、と思っていたのです(結局、ご縁があって帰国することになるわけですが)。

現実的な選択肢は日本研究司書

アメリカに残るとなると、私の場合、現実的な選択肢はひとつしかありません。日本研究司書になる、日本研究のサブジェクトライブラリアンになる、という道です。

「サブジェクト・ライブラリアン―海の向こうアメリカの学術図書館の仕事」(笠間書院)によれば、サブジェクトライブラリアンは、「特定の教科、学問領域の知識を持って、その教科、学問領域を担当しているライブラリアン」を指します。普通の人が思い描く司書というより、ナレッジコンサルタントみたいなイメージの方が近いかもしれません。昨今、学問領域はどんどん細分化、学際化しており、このサブジェクトライブラリアンという役割自体に疑問が投げかけられることも少なくないようですが、日本研究といったかなり特殊で狭い分野に限定していえば、まだまだ重要な役割を担っています。

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アメリカやカナダの大学では、今も15人~20人ほどのライブラリアンが、日本研究司書として活躍しています。大昔は、日本人でありさえすれば、そしてMLIS(図書館情報学修士)を取りさえすれば、日本研究司書のポジションに着くことは可能でした。慶應の図書館・情報学科を出た私の大先輩にあたる方々も、特に他の専門分野を持たずにアメリカの有名大学で働いていました。勿論、日本の専門家としてものすごく努力されていたというのは以前に書いた通りです

日本人であるだけでは難しい日本研究司書

しかし、私が留学した頃にはかなり状況が変わっており、最低でも何かひとつ専門分野でマスターをとっているか、PhDを持っていないと難しいと言われ始めていました。最近ではその傾向はとみに顕著になっており、最初からライブラリアンを目指す人よりも、元々研究者か、学校の先生か、研究者を目指していたというような方がキャリアチェンジして日本研究司書になるケースの方が圧倒的に多いようです。先に挙げた本、「サブジェクト・ライブラリアン」を書かれた田中あずささんも、最初は韓日関係史が専門で、国際関係学の修士号を取られたあとシラキュース大学でMLISを取られています。

 ないよりまし?サーティフィケイトプログラム

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私はといえば、そもそも机にかじりついてカリカリ勉強するのが苦手でした。日本の専門家になるために、歴史学や政治学や教育学、なんでもいいけど専門分野を選んで、またゼロからスタートしてマスターを取る?どう考えてもあり得ません。PhDなんかとんでもない。第一お金が続きません。

MLISだけで自分の専門性をアピールできる材料はないものだろうか・・・?そう思いながら、なんとなくJapanese Studiesといった言葉でネット検索していると、なんと、それらしきものがありました。これは良いかも。ないよりマシかも。

それは何かというと、「Japanese Studies Certificate Program」という名前の修了コースでした。ピッツバーグ大学あるいは大学院で開講している授業のうち、日本に関するものを受講し、決められた単位数を取得したら、修了証が発行されるというものです。これ、履歴書に書いて効力を発揮するかどうかわからないけど、でも何もないよりはいいだろう。これにしよう!

アカデミックアドバイザーの承認をもらう

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 こうして、私は日本研究司書を目指す第一歩として、とりあえずサーティフィケイトプログラムを受講することにし、アカデミックアドバイザーのサインをもらって履修届を提出しました。図書館情報学の授業は順調に単位が取れていたので、セメスターごとにひとつ授業を増やすことはできそうだと踏んでのことでした。 

しかし、、、世の中そんなに甘くない。ほどなく私はアメリカで初めての挫折を味わうことになります。

(つづく)