言いつけ通りの食事を守って3日後、2度目のワークアウトの日がやってきました。
まずはトイレを済ませ、着替えたら体重その他の数値を測定します。たった3日ですが、夜にお酒と炭水化物を摂取しないというのは相当に効くんでしょうね。自力では100gも落とせなかった体重が、なんと700グラム減っていました。体脂肪率も0.1%減りました。大きめのステーキ一枚分ぐらいの脂肪が私の体からなくなって筋肉に変化した、と考えれば良いのでしょうか(違う?)
「水分量が前回と一緒ですから、これは確実に効果が出てますね」とトレーナーさん。
1回目のトレーニングで折れた私の心はだいぶ回復し、再びやる気が出てきました。
「さあヒロセさん、今日は上半身です。このベンチプレス、やったことありますか?」
いえ、全く初めてです、とベンチプレスを目の前にして私は答えました。立川談慶師匠が100キロ持ち上げてるのはFacebookでなんども見ているので、寝ながら行うエクササイズということは知っています。
「そうだ。ヒロセさん、その指輪、たぶん外した方がいいと思いますよ。僕の結婚指輪、これで傷だらけになっちゃいました」。
なんと、そんなに負荷がかかるものなのか。私は薬指のリングを外しお財布に入れました。今後ワークアウトのたびに外さないといけないのは不安なんだけど、、、粗忽者の私、これだけは死んでもなくさないようしなくては、、、。
例によって、まずはトレーナーさんが見本を見せるため、ベンチに仰向けになりました。バーを持つ位置を示した後、
「ちょうど胸の間、ここのところにバーが降りてくる位置に身体を固定します」と説明。ブラジャーの前ホックのあたりってことでいいのね、と私は心の中で思いました。
「薬指位置を決めてバーを握ったら、肩甲骨を寄せてしっかり胸をはります。決して腕でバーを下ろさないこと。肘から引くイメージです。」
「あの、呼吸はどうすればいいんですか」
スクワットの時のような頭の痛みを再び味わうのは嫌なので、聞いてみました。
「引く時に吸う、上げる時に吐くです。でも相当重さがかかってくるので、どうしても息を止めることになっちゃうんですけどね。」
さて、いよいよ私が仰向けになりました。
「はい、バーを下ろしますよ。これでまず10回いきます。胸張って!はい、引いて!上げてっ、いーちっ!」
バーの重さはたった10キロです。が、5、6回目までは順調に持ち上げられましたが、7回目から急に重さを感じだしました。
「腕つかわない、腕つかわない!肩甲骨寄せる!はい、はーち!きゅううううううっ! ラスト!じゅううううううううっ!はい、オーケーっ!」
10回終えると、先日のスクワットほどではないですが、また頭がガンガン痛み出しました。
「あー、アタマ痛い!」
「ちょっと空気入れましょうか。どうしても酸欠になっちゃうんですよね。僕が担当したお客さんでやっぱり毎回頭痛くなる人がいましたけど、でも、そのうち慣れて痛くなくなると思いますよ」
そうなの?なんか頭の血管がプチっと切れそう。またしても「中高年主婦、トレーニングジムで死亡」のニュース見出しが頭によぎる私、、。
トレーナーさんは、束の間の休憩中に私の気を紛らすためか色んな話を矢継ぎ早にしました。
「ヒロセさん、フォームはきれいです。言うことないですよ。背中がどうしても丸まっちゃう人も結構いるんですよ。」
「あー、私、うた、習ってるんで、それでかも、しれないです」
息も絶え絶えに私は答えました。
コロナになってから、私が所属しているアマチュアの混声合唱団は練習が全くできなくなりました。あんまり声を出さないとほんとに出なくなるので、ボイストレーニングをオンラインで習うことにしたのです。どうせなら英語の練習もしようとネットで見つけたのは、メルボルン在住のオーストラリア人の先生でした。その先生がことあるごとに言うのが、胸を上げなさいということ。同時に顎は下げる。まるで自分は女王であるかのような雰囲気で歌いなさい。しょっ中注意されていることなので、胸を張るという感覚はなんとなくわかりました。
トレーナーさんはこんなことも言いました。
「一般にお姉様方は力強いですね。やっぱり知らず知らず鍛えられてるんですかね。二十歳ぐらいの子とか、この10キロ持ち上げられない子、結構いますよ」。
彼の言葉を脳内変換すると「オバさんは力持ちだけど若い女の子は非力なことが多い」でした。
「初日のトレーニングで『やっぱり私やめます』とか言う人っているんですか?」と私は聞いてみました。
「いないですね」とトレーナーさんは即答。
「やっぱりここで自分を変えたいって覚悟を持ってくる人が多いからじゃないですか? 私が今も担当してる50才の女の人なんか、来た時体脂肪率40%で、こんなの全く上げられなかったですよ。それが、なんと今や体脂肪率24%ですよ。さすがに1年かかりましたけどね。『あの頃がなつかしいねえ』って2人で話してますよ」。
初日ドロップアウトの第一号にならなくてよかった、と私は思いました。
そんなこんなで、この後はベンチプレスを負荷を少しだけ上げて10回×3セット、斜め腕立て伏せを10回×3セット、いろいろやって終了。
「今日は腕じゃなくてこの辺に相当くると思いますよ」と、トレーナーさんは大胸筋と呼ばれる部分を指差して言いました。
筋肉痛より何より。この頭痛、なんとかならないかしら? 今日もやっぱり頭が痛くなってしまった。ほんとに大丈夫なのか?なんか私深刻な病気でも抱えてる?
この先、ワークアウトのたびに頭が痛くなったら、どうしよう。なんとか頭痛くならない方法を見つけなければ。
果たしてどうなることやら。
つづく。