【47】アメリカの小学校でファッションショーをした時の話。浴衣も着物もいい加減な知識しかなかった

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民族衣装のファッションショーで浴衣を着る

アメリカ人のルーツは色々ですし、小学校には様々な外国人の子供が通っています。ある時、小学校のファンドレイジングの一環で、校庭を会場に民族衣装のファッションショーをやることになりました。自分たちのルーツに因んだ民族衣装を着て舞台に乗り、司会者が解説を読み上げるという趣向で、日本人の我々にもお声がかかりました。

日本の民族衣装といえば、着物か浴衣だけど、、。どっちも持ってない。どうしようかなあと思っていたら、大人の浴衣ならあるわよ、とマダムが言いました。過去に何かのイベントを開いた際、当時の日本人コミュニティでお揃いの浴衣を誂えたことがあったのだそうです。帯も作り帯だし簡単よ、とマダム。そこで私はその浴衣を借りることにし、娘2人には、私と姉が子供の頃に着ていた浴衣を日本から送ってもらうことにしました。

が、しかし。当時の私は着物はおろか浴衣の着方もわかりませんでした。「自分1人じゃ着られませんし、子供達にも着せられないんですけど」とマダムに告げると、浴衣なんて簡単なんだけどねーと言いながらも、手伝ってくださることに。

こうして迎えた当日、控え室の教室はチマチョゴリやサリーやカンガなど、様々な衣装に着替えた子供達で賑わっていました。みんなかわいい!教室のあちこちでは撮影会が繰り広げられています。私は、別に大人の自分が着る必要もなかったかもなあとも思いつつ、娘たちと一緒にマダムに浴衣を着せてもらいました。

後々気づいた、ひどい着こなしの浴衣

こうして舞台に立ったファッションショー、つつがなく終了したのですが、何年も経った後、ふとした機会にこの時の写真を見たら、まあその着こなしのカッコ悪いこと!当時はまったく気にしていませんでしたが、サイズが全然合っていない。裄(ゆき、袖の長さ)が短すぎ、私の腕はにょっきりとはみ出している、襟はつまっている。もうちょっと腕を引っ込めるなどの工夫をすれば、まだマシだったのに、、。

誤ったキモノのイメージを振りまく?

そんな細かいことなんか日本人以外に分かりゃしないじゃないか。そう言う人もいるでしょう。そうかもしれません。でも、だとすると、その人は他の国の民族衣装にも同じようなレベルの敬意しか払えていないのではないでしょうか。

日本の観光地や空港でインバウンド向けに売っているような、ドラゴンが描かれた意味不明のペラペラのkimonoもどき、あれを着物だと思われたらいやだなという感覚はそんなに特別な感覚でもないと思うのです。しかし、私も知らない間に誤ったキモノのイメージを振りまいてしまっていたのでした。

一人で着物が着られるようになろうと決心

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当時はまったく気にしなかったのに、何故写真を見てこりゃひどいと思ったのか。それは、今の私は着物を一人で着ることができて、それなりに目も肥えてきたからです。

日本に帰国して1年ぐらい経った頃、ふと、自分一人できちんと着物が着られるようになりたいなと思いました。このファッションショーのことが頭の片隅にあったというのもありますが、一人でさらっと着物が着れたら単純にカッコいいなと思ったのです。

実家から着物を送ってもらうと、まずは着付けのできる友人を家に呼び、個人レッスンを受けました。その後、DVDを見ながらひたすら脱いだり着たりの練習を繰り返し、さらに着付け教室でも先生に習い、そして、着物を着たら、どんなに不格好だろうがなんだろうが勇気を出して外に出かけ、他人の視線にさらされる。これをせっせと続けました。

着物は海外では素晴らしいコミュニケーションツール

半年ぐらい経つと、お太鼓結びであれば、自信を持ってお出かけすることができるようになりました。本当に着物好きなマニアに比べたら、私の手持ちの着物も帯も小物もほんのわずかです。が、今では海外に行く際、何かしら改まった集まりがあるような場合には必ず持っていくようにしています。

着物の威力はすごいです。一度、フィラデルフィアの地下鉄で、駅員さんが「あなたがあまりにも素敵なので」とタダで乗せてくれたことがありました。レストランでも丁重に扱われます(これは日本でもそうですね)。パーティでも身の置き所がなくて困るということがなく、必ず誰かが話しかけてきますし、写真を一緒に撮りたいとせがまれます。何よりも素晴らしいコミュニケーションツールだと思います。

これ、浴衣でも悪くはないのですが、私は浴衣を着てもいまひとつワクワクしません。TPOに合わないのも理由のひとつですが、多分着物には複雑な工程とプロトコルがあり、ちょっぴりハードルが高い。だからこそ着た時に背中がしゃきっとし高揚感が生まれる。だからかなと考えます。

アメリカの小学校の校庭で娘たちとファッションショーに出た時には、まさか自分が着物を着るようになるとは思っていませんでした。この先もそういう「まさか」に出会えたらいいなと思います。そうなるように自分を日々アップデートしていきたいですね。

(つづく)

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