音楽の授業では本格的な楽器を選択
我が家の4人の子供のうち、下の3人は同じエレメンタリースクールに通っていましたが、3年生以上は音楽の時間に何種類かの楽器から好きなものを一つ選択することになっていました。3年生の長女はフルートを、5年生の次男はバイオリンをそれぞれ選びました。楽器は全て貸し出し。保護者の負担はありません。アメリカの公立校の場合、楽器に限らず教科書や文房具、水着など全て貸し出しなので、親が何かを準備するということは本当に少なかったです(その代わり、なにかとファンドレイジングの協力は求められましたし、誕生日やバレンタインデーにクラス全員のお菓子を用意しなければいけないとか、意外な部分での負担がありました)。
さて、この楽器、大人が使うのと同じ本格的なものでした(バイオリンは子供サイズだったかもしれませんが)。公立学校の音楽教育で縦笛やピアニカを使わないことに私はびっくりしました。大人でも簡単には弾けない楽器を全員の子供にあてがうとは。フルートは息を吹き込めば音が鳴るというものではありませんし、バイオリンの弦を弓でこすっても、いきなりきれいな音が出るはずもありません。しかし、2か月後には保護者を招待しての発表会が予定されていました。数少ない授業の中で、ごくごく簡単な曲を何度か練習し、間もなく本番の日を迎えました。
音楽発表会、聴くに堪えない拷問の時間(笑)
日本の場合、学年ごとの能力に応じた楽器を用いつつ、人様に聞いていただくのに恥ずかしくない程度には練習を重ねる、これ、ごくごく普通のことですよね。けれども私の子供たちがいたアメリカの学校の場合、あくまで通過点にすぎない子供の成長過程をそのまま見せるという意図の方をより強く感じました。「短い期間で出ない音が出るようになった」ということ自体を大いに褒めてほしいということなのだろうと思いました。
子供たちは小グループに分かれ、次から次へと曲を披露していきました。予想はしていたものの、まあ、下手だこと下手だこと・・・。バイオリンは、曇ったすりガラスを爪でキーキーひっかいたような音を立て、メロディを奏でているのかいないのかもよくわからず、私は鳥肌を立てながら一生懸命聴き入りました。フルートは、指で押さえれば曲がりなりにも音階の音が出るのでまだマシでしたが。。周囲を見渡すと、さすがアメリカ人、保護者たちはみんな手をたたいてイェイと叫んだり、指笛を吹いたり、拍手喝采し、子供たちの成果を心から称えていました。こうやってポジティブな評価をもらいながら、好きなことで自信をつけていくものなのかなと、私は思いました。
日本のある幼稚園でベートーベン第九の練習
話は昨年の秋のことになりますが、私がある幼稚園の前を歩いていると、塀の向こうの園舎から合奏の音が聞こえてきました。
カスタネットやタンバリン、木琴や鈴の音に混じってリード楽器の音が聴こえていました。何気なく聴いていると、それは 幼稚園児がやるような童謡ではなく、ベートーベンの交響曲第九番の第四楽章でした。しかも有名な「歓喜の歌」の合唱パートではなく、完全にオーケストラの演奏部分なのです。第四楽章の中盤で合唱が「フォール ゴーット!」とフォルティシモで歌ったあと、フェルマータの休符が入りますよね。通常はその次に、ブン♪(2,3,4)ブン♪(2,3,4)とファゴットと大太鼓が入る所です(知らない人にはなんのこっちゃですね、すみません)。
小さくまとめることにおいては日本は群を抜いている?
これを幼稚園児が?合奏で?私は驚くとともに、ここまで仕上げる先生方の執念に舌を巻きました。子供だって出来る子出来ない子、真面目に取り組む子、あっちこっちにふらふら出歩く子、いろいろいるだろうに。このクオリティにまとめ上げるにはそれ相応の強制力がないと無理だろうなあと思ったのです。
ピアニカとか木琴とか、言ってみれば「本物ではない楽器」でそれなりの音を奏でさせ、先生がそつなくまとめ上げる。これ、本当に日本は得意だと思います。アメリカの子供たちがバイオリンをギコギコ弾くのとは雲泥の差です。でも、きっと中には絶対にやりたくない子とか、変な音を出しちゃう子とかがいるばずです。そういう子は、例えば音が鳴らない仕掛けにするとか、何かしら排除される形で、あの幼稚園児とは思えないクオリティの音を仕上げているのだとしたら・・・。堂々とへたっぴぃな演奏を楽しむ子供とどちらが幸せで、どちらが音楽を好きになれるか、そして最終的にどちらがモノになるのか。私は少々複雑な気分になりました。
私自身、さんざんヒステリーを起こして息子をピアノ嫌いにしたし、もといた会社の余興の合唱では練習に熱が入りすぎあわや出社拒否になりかけた人まで出てしまったり。。鳥肌を立てながら聴いたあの発表会を懐かしく思い出しつつ、反省したのでした。
(つづく)
◆◆おまけ◆◆
6月13日に始めたブログ、今日でちょうど50記事になりました。100記事は継続して更新すべしという各方面からのアドバイスもあり、引き続き更新していくつもりです!いつもありがとうございます。
広告